2022年
第27回入賞作品
10代の約束賞
ひいおばあちゃん 辻本 奈央(16歳 高校生)
「明日からひいおばあちゃん来るから。」
そう母に伝えられた。
私のひいおばあちゃんは、福島の大きい家に住んでいる。昔から健康なひいおばあちゃんは、あまり病気をせず、体も元気だった。そんなひいおばあちゃんも、もう今年で九十一歳、体中の骨がもろくなってきて、少し風が吹いただけで倒れてしまう事が増えて、外で倒れている事が増えたそうだ。福島の家のまわりは畑が多く病院も近くにない。スーパーすら車を使わないと行くのに時間がかかるくらいだ。福島の家には、おじとおばも住んでいるが二人とも仕事で帰りが遅い、ひいおばあちゃんを一日中見てられる人が居ない。となって私の家に引っ越すことになったのだ。私の家には、おばあちゃんとおじいちゃんがいるので、ひいおばあちゃんの事を見てられる人がいる。こっちの方がひいおばあちゃんも安心だし、ゆっくり休める、そう思っていたけど、ひいおばあちゃんからしたらあまりそうではなかった。ずっと昔から住んでた家とは違う環境になれていく事が難しく、あまり休めているようには見えなかった。ひいおばあちゃんは自分は迷惑をかけてる。そう思い込んで、ひいおばあちゃんが寝ている部屋の電気も、電気代かかるから、と言って夜はまっくらの中一人で部屋の中にいた。さみしそうだからと、リビングにさそい、テレビをつけた。それも耳が聞こえづらいからつけても電気代がかかると言って部屋に戻ってしまった。ある日いつも通りに夜ご飯を食べていると、ひいおばあちゃんが「長く生きすぎたぁ。早くむかえが来るといいんだけんじょ。」そう言っていた。家族みんなで、どうしたら喜んでもらえるか、ゆっくり休めるか沢山考えたけど、良い案は出て来なかった。私も友達の遊びに行ったり、バイトなどで忙しくなって、帰るのはいつもひいおばあちゃんが寝てからになって、毎日話す口数もへり、「おはよう。」「いってきます。」くらいだった。そんな中、私は学校に行くのが嫌になりお母さんに学校を辞めたい、と打ち明けた。お母さんは夜遅くまで友達と遊んで学校に行きたくないと言う私を許す訳が無かった。夜遅くまでお母さんと言い合いをした。夜ご飯も一緒に食べなくなって家に帰るのももっと遅くなった。学校から帰って来てバイトの準備をしようと思ったら食卓の上に「奈央ちゃんへ」と私あての手紙が置いてあった。おばあちゃんに「これなに?」と聞いたらさっきひいおばあちゃんが一生懸命書いてたよと言われ、自分の部屋に行って封筒を開けた。その中には一枚の手紙が入っていた。「親の意見となすびの花は千に一つの無駄はない。奈央ちゃんもいつか分かる時が来ます。人生最後のおばの言葉を思い出して頑張ってください。」と書いてあった。私はその手紙を読んだ時、この言葉の意味はよく分からなかったけど、なぜか涙が止まらなかった。スマホを使って調べたら、親が子どもに言う事は子どもの将来を思って言っていること、と書いてあった。私はその時色々気づかされた気がした。
私はひいおばあちゃんからもらった手紙をもらってお母さんはもちろん、ひいおばあちゃんも夜遅くに帰って遊びっぱなしの私を心配してくれてたんだと感じた。私はあの時ひいおばあちゃんから手紙をもらっていなかったらきっと、どん底に落ちていたと思う。私はお母さんとひいおばあちゃんの期待に応えられるように、高校は卒業する、と約束をした。そして卒業して卒業証書を持っている私をひいおばあちゃんに見せてあげたいと強く思った。