第28回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2022年
第27回入賞作品

佳作

自分との約束の守り方 岸本 紗良(14歳 中校生)

 私は長期休みに入る前に毎回自分と同じ事を約束する。この休みは絶対宿題を早く終わらせると。でも、守られた事はただの一回もない。いつも思い出されるのはスマホを見てダラダラしている私。休みが終わる一週間くらい前から焦ってやり出す。これが私の長期休みのルーティンだ。何故いつも自分との約束が守れないのか?
 中三の冬休みに入る前、ある友達と話していた。その友達は中三になってから色んな事が疎かになっている。こんな自分が嫌だと嘆いていた。そう言えば、私も中二の方がもっと生活が充実していたなと思い、中二と中三で変わった事を考えた。でも、考えても思いつかず結局その日は寝た。それから一週間くらい経ってからだろうか。ふとその事を思い出して母に質問してみた。すると母は考え込んで、こう言った。
「そう言えば紗良の話の内容が、歳をとるに連れてあんまり未来に期待しなくなったんじゃない?中一の頃は、絶対明日五十メートルのタイム一秒伸びてると思うとか言ってたけど、最近は過去の話ばっかりしてるんじゃない?後、ちょっと体重増えたとか(笑)」
母はいつも一言多いのだったが、言われてみればそうだなと思った。でも、私が知ろうとしている事と関係があるだろうか。そう考えているとそんな事を聞く私に疑問を抱いたのだろう。母がどうしたのかと質問して来た。私は母に全て事情を話した。するとまた私をあんたはダラケてるとか言って貶(おと)してきた。
 冬休みが終わる一週間前の夜ご飯の食卓で宿題が終わっていない私を父が煽って来た。
「まだ宿題終わっていないのか?」
「パパには関係ないでしょ。」
その会話に母が乱入しに来た。
「冬休みの始まる前に想像していた通りの結果ね。」
この会話も長期休みのルーティンの一環だった。毎回そう言われるのが悔しいが、まあ自業自得だろう。その日の晩、母と二人でリビングにてココアを飲んでいた。父と弟はもう就寝していて、その静かな空間の中に聞こえるのは飼っている兎の足音だけだった。そんな空間の中、母が
「ねえ、ずっとあの事について考えていたんだけど、」
と一言。あの事とは自分との約束を守れないという私の悩みの事だ。
「ママね、ずっと考えていたんだけど紗良は未来の自分が想像出来なくなっちゃっているんじゃない?ママね、ここ三ヶ月くらいでマイナス十キロ痩せた時、自分と約束してたの。マイナス十キロしたら推しに会いに行って綺麗になった自分の姿を見て貰うって。痩せようとしていた頃、ずっと推しに会ってる自分の姿を毎日想像して、それがいつか叶うって信じていた。だから、紗良も自分の理想の姿を想像して信じてみたら?」
母は自分の経験談を踏まえながらそうやって語ってくれた。いつも冗談交じりで私を馬鹿にしてくる母がそうやって私のために一生懸命考えてくれるのが嬉しかった。確かに言われてみれば最近自分の未来の姿を想像しなくなった。もし想像して期待が外れる事が怖かったんだ。だから信じてあげれなくなっていたんだ。頭の中の黒いモヤが晴れた気がした。
 この経験を通して学んだ事は自分との約束を守れる人は勇者だと言う事だ。私はここで約束します。今年の春休み、私は勇者に成ると。