2021年
第26回入賞作品
プロミスお客様サービスプラザ賞
白くまの服 髙田 優(13歳 中学生)
私が小学校四年生のとき、父方のひいおばあちゃんが亡くなった。人生で初めておそう式に行き、かんおけに入る前に顔に布をかけられているひいおばあちゃんに会った。正直、ひいおばあちゃんとは、一緒に遊んだり、まともに話をした事がなかった。だから、おそう式で、ひいおばあちゃんの遺体を目の前にしても、ひいおばあちゃんとの今までの思い出が込み上げて号泣する、という事も無ければ、亡くなって悲しいという思いも、私の中にはほとんど無かった。しばらくして、ひいおばあちゃんの遺体が、かんおけに入れられた。親族たちが、次々とかんおけの中に、きくの花を一本ずつ入れていき、私の番がきたので私もきくの花を入れた。その時、私はなぜかそのきくの花が、公園に咲いているシロツメグサに見えた。すると、小さい頃にひいおばあちゃんと親せき達とお花見しに行った公園で、ひいおばあちゃんにシロツメクサのかんむりを作ってもらったのを思い出した。
「ゆうちゃんかわいいね~。よく似合ってるよ~。」
と、満面の笑みでかんむりを私の頭にかぶせてくれた。私が、
「かわいい!私これずっともっておきたい!」
と言うと、ひいおばあちゃんは笑って、
「ずっともっとくとお花かれちゃうから、おばあちゃんが今度ぬいぐるみにお花ぬってあげるね。」
と言った。私が本当?約束だよ?と前のめりで言うと、うんうんと変わらず満面の笑みで優しく、うれしそうに言っていた。私は、おもわず泣いてしまい、かんおけに入っているひいおばあちゃんに抱きつこうとしたが、父親に止められ、外に出た。どうしてもっといっぱい遊んだり、話をしなかったのかと、そのときとても後悔した。おそう式のあと、火そう場に行き、ひいおばあちゃんの火そうをした。灰になって出てきたひいおばあちゃんをみて、何回もあの優しそうな笑顔が頭に浮かんだ。その後、お墓に納骨し、親族たちが、それぞれ帰っていった。すると、家に帰って遺品整理をしていたという、私のおばあちゃんから一通の電話があった。
「渡したいものがあるから、お家にうかがうね。」
という内容の電話。私は何だと気になりながらおばあちゃんが来るのを待った。
「ピンポーン」
とインターホンが鳴り、おばあちゃんが来た。おばあちゃんは、持っていた紙袋の中から一つの大きくも小さくもない包みを取り出し、何も言わず、私にくれた。私はおばあちゃんの顔をみると、まるで開けてみてと言わんばかりの顔をしていた。包みには
「ゆうちゃんへ」
と書かれていた。開けてみると、ふわふわの白くまのぬいぐるみがあった。しかも、その白くまがどこかで見たことがある花の柄の服をきていた。まさかと思い、おばあちゃんの顔をみると、おばあちゃんはうるうるした目で、
「ひいおばあちゃんの遺品整理をしてたらね、 その包みが出てきたの。ひいおばあちゃんがね、ゆうちゃんと約束したんだって言いながら病院に入院する前までぬってたんよ。」
しかし、入院してしまったため、完成間近だった服作りを途中で断念したらしい。何年も前の約束を守ろうとそこまでしてくれたと思うと、涙が止まらなかった。つくりかけの服をみて、私はクローゼットの中から裁ほうセットをとりだし、泣きながら途中になった白くまの服をつくりはじめた。ひいおばあちゃんとの約束をはたすために。