第29回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2017年
第22回入賞作品

学生特別賞

元気に再会できる日を 三好 由芽(12歳 小学6年生)

 私は五年生の冬、七時間半に及ぶ手術をした。手術する数週間前のことだ。久しぶりにお母さんとお風呂に入った。するとお母さんに「なんかお腹張ってない?」と言われ、見てみるとだいぶお腹が膨らんでいた。自分のお腹なんて普段まじまじと見ることなんてないので全く気づかなかった。私は急にこわくなった。次の日、軽い気持ちで地元の病院に行った。触診をしながら段々と先生の顔がまじめになり、笑顔がなくなっていくのを見ると、私は怖くて仕方が無かった。すぐに大きな病院に行く様に言われ、様々な検査をした。検査の結果、お腹に腫瘍があることが分かった。?然とした。私が?まさかって。そのまま入院となった。
私は一瞬にして明るかった人生が真っ暗で先も見えなくなった。そんな時、私を手術してくれる前川先生は毎日私の顔を見に来てくれてとっても明るい先生だった。入院生活の唯一の楽しみでもあった。迎えた手術当日。
不安しかなかった私に前川先生はたわいもない話で盛り上げてくれた。手術室に入るとドラマでみるような光景だった。私はキョロキョロと色んな所を見渡しながら、段々と怖くなってきて泣きそうになったのを今でも覚えている。すると前川先生は私の近くに来てくれて眠るまでの間「しんどくない?」「痛くない?」とずっとしゃべりかけてくれていた。
 私が目覚めた時にはもう手術は終わっていた。「え?ほんまに終わった?」すぐに前川先生に聞いた。まるで数分しかたっていないような気がして不思議で仕方が無かったから。でも、実際は数分間どころか七時間半たっていた。私はようやく理解した。「やっと終わったんだ。」と安心した。理由もなく涙がでた。
 私の戦いは次の日から始まった。お腹を縦に13cm切ったので、傷の痛みは強烈だった。毎日毎日ずっと泣き続けていた。そんな時、前川先生は「僕も七時間半飲まず食わずで頑張ったんだよ」と教えてくれた。「頑張っていたのは私だけじゃないんだ。」と思えた。それから数週間後、私はすっかり元気になり自分の体についてもっと知りたくなった。前川先生にお願いして、お母さんやお父さん達と一緒に術後の説明を聞いた。前川先生は私にも分かるように写真などを使って詳しく説明してくれた。私は自分がどんな病気におかされていたのか、どんな手術をしたのか、本当のことを知るのは怖かったけど、前川先生をはじめ多くの先生方が私の体を治すために頑張ってくれていたことを知ることができた。そのことは私の半年間続いた入院生活の心の支えとなり、辛いことも乗り越えることができた。
 退院の時、私は前川先生と将来看護師になって、この病院で一緒に働くことを約束した。入院中、辛かったことや嬉しかったこと、看護師さんのしてくれたことを日記に書いていた。将来看護師になったとき私と同じ病気で苦しんでいる子供達の辛い気持ちに少しでもよりそえたらいいなと思い、退院後はノートにまとめた。病気になって辛いことも多かったけれど、前川先生と出会うことができ、将来の夢ができた。そして命の大切さを知ることができた。たくさんの人に支えられ、助けてもらった体を大切にしようと思う。この約束を忘れないで、夢に向かって努力しようと思う。いつか前川先生と元気に再会できることを願っている。