2016年
第21回入賞作品
中学・高校生特別賞
私と祖母 藤原 淑実(17歳 高校生)
私には、一生忘れることのできない日がある。それは、大好きだった祖母が亡くなった、今までの私の人生の中で一番長くて一番悲しい日だ。
その日のちょうど二日前、私は三泊四日の修学旅行から帰ってきた。帰ってすぐ、隣にある祖父母が住む家に、お土産を抱えてただいまと言いに行った。祖父は既に寝ていて、テレビを見ていた祖母が笑顔で「おかえり」と言ってくれた。やっと家に帰ってきたんだと実感した。その日はもう遅かったため、お土産を渡してすぐに自分の家に戻った。
次の日は土曜日で部活だった。久しぶりの部活でヘトヘトになりながら帰宅した。夕方に修学旅行先で送ったお土産が届き、近所の人に配ろうと祖母を呼んだ。祖母は近所の人ととても仲が良く、私自身一人で行くのには勇気がなかったので、一緒に来てもらった。近所の人と祖母と私で、笑顔で会話をした。
その日の夜、また祖父母の家に行くと、祖母はまたテレビを見ていた。今日のお礼を言うと、祖母は、「あんた、修学旅行のお話はいつ聞かせてくれるの?」と言った。その日の疲れから私は、「また明日ゆっくり話すよ。」と言ってしまった。それが、祖母と交わした最後の言葉だった。
「起きて!起きて!おばあちゃんが倒れちゃったよ!」
母に揺さぶられ目を覚まし、母の顔を見ると、今にも泣きそうな顔で私を見ている。「病院行くからすぐ着がえて。」母はそう言って走って部屋を出て行った。時計を見ると夜中の一時四十分頃をさしていた。足の震えが止まらなかった。着がえてリビングに行くと母が着がえながら私に言う。「トイレで倒れちゃったの。心臓動いてなくて、救急隊の人が一生懸命頑張ってる。」そう見つめる母の目も、私と同じことを思っていたと思う。私はそこで泣きさけぶことしかできなかった。病院なんて一度も行ったことがない、昨日まで普通に元気だったのに。そしてすぐ思い出した。昨日修学旅行の話する約束したことを。涙が止まらなかった。
祖母は帰らぬ人となった。頭が全く追いついていかない。本当に急すぎる別れだった。そのまま何も考えたくなくて一日部活に行った。本当に本当に悲しくて長い一日だった。幼い頃、共働きだった両親に代わって祖父母が時にはおはようからおやすみまでずっとずっと優しく見守っていてくれた。祖母は私が出かけるとどこにいても必ず玄関まで来て「いってらっしゃい」を言ってくれた。長い休みの時には毎日のようにお昼ご飯を作ってくれた。とても大切で大好きだった。
今だに私は、あの時疲れていても修学旅行の話をすべきだったと後悔している。たくさん話したいことがあったのに、それを伝えることが、もうできない。他にも私の中で、たくさんの祖母との約束があった。花が大好きなので、北海道のラベンダー畑に自分が稼いだお金で連れていくこと、成人式の振り袖を見せること、そして第一に部活の試合を見に来てもらうこと。一つも果たすことができなかった
人との別れはいつ来るか、神様だって分からない。そんなことは周知なことだけど、強く思い知らされた。大切な人との約束ほど、大切に、すぐに守るべきだ。今、残された祖父を全力で守っていく。私でも量り知れないほどの大きな存在を失った祖父に少しでも寂しい思いをさせないように。それが、天国にいる祖母と新たに交わした“約束”だ。