2015年
第20回入賞作品
中学・高校生特別賞
おじいちゃんからのメッセージ 神内 萌乃叶(14歳 中学生)
テレパシー。超能力と呼ばれる力の一種で二つの場所の間で、何らかのデータを送受信する事。
これが、一般的なテレパシーの定義です。なぜここでテレパシーの説明をしたのか。それは、私が一度だけ、テレパシーを受信したことがあるからです。
私がテレパシーを受け取ったのは、小学二年生の六月、曇りの日の事でした。私は教室で授業を受けていました。
私はノートから黒板に視線をあげました。その時に起こったのです。そのテレパシーは来たのです。「お前になおのことを任せる。しっかり、面倒を見なさい。」と、伝えました。私は驚きながらも、ある事だけはわかりました。このテレパシーは今、近くの病院に入院しているおじいちゃんからだと。
私は驚きながらも、これは空耳の一種だと自分に言い聞かせ、また授業に集中しました。
私がテレパシーを受けて、二十分ほど過ぎた時、知らない先生が教室にやってきました。そして、授業をしていた担任の先生に何か耳打ちをしました。その様子を、クラスの生徒全員がぼうっと見ていました。担任の先生に連絡が終わったのか、知らない先生が出て行くと、担任の先生は、私のところにやって来て、
「おじいさまが亡くなったので、今すぐお母さんが迎えに来ます。お母さんの車に乗って帰りなさい。」
と、伝えました。
その言葉を聞いた瞬間、私の頭の中に、パニックが訪れました。
しかし、私はそのことを考える暇もなく、先生に急かされ、おかあさんの車に乗り込みました。
お母さんは、私が車に乗り込むと、
「おじいちゃんが亡くなって寂しいだろうけど、忙しくなるから手伝ってね。」
と言うと、これからの予定を話し始めました。
家に着いた私は、本当にあったのかわからないテレパシーの事を置いておき、母の手伝いをしていました。
そして、その日の夜。晩御飯を食べていると、急に母が
「改めてだけど、なおちゃんが無事に生まれてよかったね。」
と言いました。私は思い出しました。なおはお母さんの妹夫妻に生まれる予定だった赤ちゃんであること。そして、もうすぐ生まれるだろうと言われていたことも。
このことを思い出したとき、私は自分がテレパシーを受け取ったのだと確信しました。
しかし、なぜ、私になおのことを任せるとおじいちゃんは言ったのか。私にはそれが謎でした。なぜなら、なおには姉がいるのです。二つ年上の姉がいるのです。その上、今は、お母さんが出産のいろいろな手助けをするために、私の家の近くの病院に入院していますが、しばらくすれば、なお達は家に帰ってしまいます。私はなぜおじいちゃんに言われたかが分からなくなってしまいました。
私が悩みながらも時が過ぎ、おじいちゃんのお通夜、お葬式も終わり、私たち家族は一段落ついていました。そんな時、母が突然私にこう言いました。
「なおちゃんの顔を見に行こう。」
と。
私たちは、我が家に居候していた、なおの姉を連れて、なおの顔を見に行きました。私はその時に初めてなおの顔を見たのですが、なぜか、私はこの子の面倒を見ないといけないと感じました。これはおじいちゃんからの遺言。いや、これは私とおじいちゃんの約束です。このような事もあってか、私はいとこの中で一番なおのことがかわいくて仕方がないです。