第26回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2014年
第19回入賞作品

優秀賞

「五十二通の手紙」 髙比良 碧(13歳 学生)

 雪がぱらぱらと降り始めた、三年前のこの季節に、私は新しい学校へ転入してきました。
 私は生まれも福島、育ちも福島で、福島がとっても大好きな子供でした。周りは海に囲まれ、どんな時でもいつも隣にいてくれる友人がいて、福島での生活は本当に楽しいものでした。私は学校が大好きで、毎日毎日家に帰れば、すぐにまた学校に遊びに行き、遊びから帰ってくれば、母にその日の出来事をよくべらべらと話していました。
 そんな日々に突然、東日本大震災が襲いました。家の中は数えきれないほどの食器が割れ、タンスはうつぶせに倒れていました。一歩外に出てみると、道路は割れ、めくれあがり、地震のすさまじさを物語っていました。私の家は海岸から遠く離れたところにあったため、津波こそ免れましたが、福島を襲ったのは、地震だけではありませんでした。そう、原子力発電所の事故です。大好きな学校は、一か月休みになることが決まりました。放射線によって外で遊ぶことが制限され、友達ともほとんど会うことができませんでした。その一か月は、私にとってはとても長く、とても退屈な一か月でした。学校が始まる日まであと何日だと数えることしかできませんでした。
 一か月後。待ちに待った始業式の日です。久しぶりに会える友達の姿を想像しながら歩いていると、家を出てからあっという間に学校に着きました。ひさびさの教室に、うれしいの一言では言い表せないうれしさでした。しばらくすると、みんなが登校してきました。その日、五年一組二十六人全員がそろいました。
 また前のような楽しい日々がスタートしました。放射線のために、ずっとマスクをしたり、毎日長袖の服を着たりしないといけなくなり、少しつらかったけど、学校に行けなかったあの一か月間のつらさに比べれば、何ともありませんでした。これからは、こんな日々が毎日待っている、そう思っていました。
 ところが、私が、二か月後に転校しなければならないという事実を突き付けられたのは、小学五年生の十月のころでした。始業式の日から、半年後のことです。福島の自然が大好き、福島の学校が大好き、福島の友達が大好き。そんな私にとって、福島の土地以外での生活は考えられず、私はこの現実を受け止めることがなかなかできませんでした。転校することを知ってからは、時間の流れがとても速く感じられました。私は、友達と思い出アルバムを作ったり、友達の家に泊まりに行ったり、家族と友達で旅行に行ったり、たくさんの思い出をつくりました。
 十二月二十二日。あっという間に、転校する日がやってきました。友達が私のために、お別れ会を開いてくれました。みんなで歌をうたったり、いす取りゲームをしたり、プレゼントを渡したりと、本当に楽しいお別れ会でした。そして、お別れの時。五年一組の人だけでなく、たくさんの人が校門まで送りに来てくれました。みんなの姿を見ていると、今まで過ごした学校の校舎を見ていると、涙を流さずにはいられませんでした。別れ際、一番の親友と、こんな会話をしました。
「絶対に私たちのこと忘れないでね。」
「忘れないに決まってるじゃん。」
「じゃあ、ひとつ約束してくれる?月に一度は、絶対に手紙を書くの。お互いに。」
「分かった。約束ね。」
 あれからちょうど三年。その親友から届いた手紙は、今では五十二通になりました。私はこれからも、約束を胸に、親友へ手紙を書き続けようと思います。