第26回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2010年
第15回入賞作品

審査員特別賞

「19年後の約束」 田村 智基(21歳 大学生)

 僕には知り合って10年目、中学の時から友達の女の子│彼女はクマが好きなので仮に熊田さんと呼びたいと思うーがいる。中学生の頃からよく放課後や休日に遊んだりしていた。
 今はお互いに大学生になり違う大学に通っているが、毎日のようにメールをするし、週に一回は会ってゲームをしたり、どこかに行ったり映画を見たりして遊んでいる。ちなみに、残念ながらお互いに彼氏や彼女はいない。
 男女が頻繁にメールのやり取りをする、週一回は会う、こういう関係を世間では“付き合っている”というのかもしれない。でも、決して僕たちは彼氏彼女の関係ではなく、友達として付き合いを楽しんでいるだけだ。
 しかし、世間はやっぱりそうは見てくれないようで、外で遊んでいる時は、まわりの人に恋人同士に見られることも多々ある。挙句の果てに、僕の親までも「二人は付き合ってるんでしょ?」とか言ってくる始末。否定しても、恥ずかしがっちゃってーとでも言いたそうに、ニヤニヤした顔で見られたこともあった。
 付き合っていると思われるのはちょっと困ると思いつつも、お互いに彼氏や彼女がいないのだから、まわりの人にそう思われても仕方がないのかと納得する部分もある。
 でも、友達の関係として確かにこれはちょっとおかしいんじゃないかという事もある。例えば、熊田さんの家に遊びに行った時、部屋に普通に下着が転がっている事やいきなり着替えを始めたりする事。仲がいいとは言っても、一応異性なんだからと注意すると、彼女は笑ってすませる。本当にわかっているのか。
 普段恋愛の話はしないのだが、時々、好きな相手はいないのかとかそういう話をしたりすることはある。まぁ、特に何もないんだけれども。そんなことを話しながら、ふと僕は思った。
 このままだといつまでたっても二人とも彼氏や彼女ができないんじゃないか?もっと、恋愛に対して積極的にならないといけないんじゃないか。巷でも話題になっているように草食系じゃなく、肉食系に…とはいかないまでも。
 だから、僕たちは約束を結んだ。“40歳になってもお互い結婚していなかったら結婚しよう”と、婚姻届を共にして。他の人からしたら意味のわからない約束かもしれない。
 でも、この約束は僕と熊田さんの間では絶大な効力を発揮するのだ!多分。なぜなら、僕たちはお互い絶対に結婚したくないタイプだから。僕の外見は熊田さんの好みのタイプとは違うし、熊田さんの外見も僕の好みのタイプとは違う。
 見た目の話は置いておくにしても、何より性格が合わない。週に一回は遊んでいるのに性格が合わないなんて、と思うかもしれないが本当に合わないのだ。合わないというより真逆と言った方がいいかもしれない。僕が白と言えば熊田さんは黒と言う。その逆もまた然り。
 他にも色々と性格が合わないというエピソードもあるのだが、僕が絶対に結婚したくないと思った理由は熊田さんが風邪を引いた時に言った一言にある。頭痛と腹痛を抱え、熱を出しているその身体で熊田さんはこう言ったのだ。
 「風邪を引いた時はハンバーガーを食べないと治らない」
 もう意味がわからない。僕があまりハンバーガーを好きじゃないということもあるが、風邪の時にハンバーガーを食べるなんて言語道断、おかゆでも食べて寝ているのが一番だと思う。その一言で絶対にこの人と結婚して一緒に生活をしていくなんて無理だと感じたし、早く彼女をつくらなければとも思った。
 でも、なんだかんだ言っても熊田さんといると気楽でいられるし、一緒に過ごしている時間が経つのが早いのは本当のことで、彼女が僕の中でかけがえのない存在になっているのは確かなのかもしれないとも思う。
 19年後、僕たちの関係はどういう風に変わっているのだろうか、それとも何も変わっていないのだろうか。未来は誰にもわからない。だから、僕はこの約束の行く末を楽しみに…いや、少しだけ楽しみにしながら待ちたいと思う。