第26回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2007年
第12回入賞作品

中学・高校特別賞

「一ケ月に一回のカレー」 鈴東 聡子(18歳 女性)

 今日は、一ケ月に一回やってくる「カレーの日」だ。私はカレーが一番好きである。

 私の家では、「カレーの日」が金曜日と決まっているので、私はこの日、学校ではテンションが高く、どこかソワソワしている。そして学校が終わると、一番早いJRで家に帰る。私はルンルン気分で、国道沿いの細くて長い歩道を自転車でビュンビュン飛ばしていく。急いで自転車を止めて、家に駆け込むと、おいしそうなカレーのにおいが、プ~ンッとしてくる。私の顔がほころんでいく。いつもは着がえるのが遅い私だが、この日はさっさと制服から部屋着へと着がえる。そしてまず私がすることは、シュークリームを食べることだ。私はカレーの次にシュークリームが好きである。だから、「カレーの日」には必ず冷蔵庫の中にシュークリームが入っている。シュークリームはデザートとして、食後に食べるのが一般的だが、私の場合、カレーとシュークリームの組み合わせの時は、シュークリームを先に食べることにしている。やっぱり、一番好きなものを後からじっくりと味わいたいという気持ちがあるからである。シュークリームを食べ終えると、次はカレーのつまみ食いだ。マニアックかもしれないが、つまみ食いをする時は、煮込んだ後にできる表面の薄い膜をはしで取り、小皿へ入れる。おまけとして、溶けかけた玉ねぎと小さなお肉を一つずつ運び入れるのだ。私はニヤニヤしながら、テレビの前に移動し、それをつまみ食いをする。「うまっ。」思わず口に出してしまう。早くごはんにならないかなあ、と待ち遠しくなる。すると、「ごはんだよ~。」と母の声が家中に響く。私はバッと立ち上がり、バタバタと席に着く。私の目の前には、キラキラと輝いた、おいしそうなカレーがある。私は見た目の割によく食べる。というか、一般男性よりも食べるほどだ。そのせいか、私一人だけ皿が一周り大きい。そのなかに、カレーが盛ってある。私はまず、はしを手に取り、納豆をガーッといきおいよく混ぜる。そしてその納豆を全てカレーの真ん中にのせるのだ。その横には、真っ赤な福神漬けを添える。私は、その納豆カレーにがっついていく。それを三回繰り返すのだ。つまり、おかわりを二回するということになる。これが私の家でのお約束であり、一ケ月に一回、私は同じ行動をしているのだ。

 ではなぜ、私の家では一ケ月に一回、金曜日に「カレーの日」というものがあるのかというと、この日は、母が病院に通う日だからである。実をいうと、私の母は身体障害者である。身体障害者といっても、家事は普通にこなすことができるし、私と一緒に買い物に出かけることだってできるほど、健康的である。しかし、母の病気は、現在の医学では治療できない難病なので、一ケ月に一回、金曜日に必ず、病院に通い、診察して薬をもらわなければならない。それが、十年間ぐらい続いている。つまり、十年間ずっと、一ケ月に一回、金曜日にカレーを食べているということになっている。

 しかし、なぜカレーなのだろうと疑問に思うかもしれないが、それなりにちゃんとした理由がある。カレーは簡単に作れる料理であり、私だけでなく、家族みんなの大好物であるからだ。朝早くに家を出て、夕方に帰ってくる母にとってカレーは、最強の味方なのだ。しかも、カレーは煮込めば煮込むほどおいしいので、たくさん作っておき、家族みんなが休日の土曜日の昼食にまで、食卓に並べられる。

 もう私の家では、「一ケ月に一回、金曜日の夕食はカレー」というのが定番なので、仮に母の病気は完治し、病院に通うことがなくなっても、この「カレーの日」はずっと続けていくだろう。そして、私は将来新しい家庭をもつことになっても、この「カレーの日」を受け継いでいきたいと思っている。