第29回 約束(プロミス)エッセー大賞

過去の受賞作品

2018年
第23回入賞作品

10代の約束賞

一枚の絆創膏 浅井 花音(15歳 中学生)

 私はいつも心がけていることがある。それは、「必ず一枚は絆創膏を持ち歩く」ということだ。
 小学生になり、自転車が乗れるようになった。私は嬉しくて、毎日のように自転車で、遠いところへ行った。家を出る時、母は必ず
 「ヘルメット被るんだよ。」
 という。
 一年生の時は、ヘルメットを被っていた。
 しかし、二年生になると被りたくなくて、「嫌だなぁ~」と思いながら、自転車をこいでいた。
 友達と公園で遊び終わった帰り道のことだった。辺りは薄暗かった。急いで帰らないと大変だといつもより速く足を回転させていた。
 すると、私は目の前に少し大きめの石があることに気付かず、転んでしまった。ヘルメットを被っていたから、顔や頭はまったく痛くなかった。
 しかし、腕や足までは、守ってくれなかった。周りに誰もいない中、ひたすら私は泣いていた。すると、一人の男性が走ってきた。その男性は私に
 「君、大丈夫かい。お母さんの事電話で呼ぶかい。」
 など沢山聞いてきた。私が、
 「家まであともう少しだから大丈夫。ありがとう」
 というと、男性は私に一枚の絆創膏を鞄から出して、貼ってくれた。私は嬉しくなり、すぐに笑顔になった。男性も笑顔になり、
 「今度から絆創膏一枚持ち歩くといいよ。」
 と言い、私の元を去っていった。
 その日から私は、絆創膏を一枚鞄の中に必ず入れて、困っている人がいたら助けるようにしようと思った。
 そして、六年生になり最高学年となった。私の通っていた小学校では、六年生は兄弟学級である一年生の面倒を見るという決まりがあった。私は小さい子が大好きだった。なので、昼休みは毎日お世話をしたくて一年生の教室に行った。仲の良い友達もできた。しかし、一人の女の子はいつも私が話しかけるとどこかに行ってしまった。私はその女の子と仲良くなりたくて声をかけるが口を開いてくれなかった。
 ある日、私はお使いを頼まれて自転車をこいでいた。すると、仲良くなりたいと思っていた一年生の女の子が公園の水飲み場で足を洗っていた。私が、様子を見に行くと、すり傷があった。私は
 「大丈夫?」
 と声をかけた。返事は返ってこない。私が、絆創膏を渡して帰ろうとしたら、女の子は、
 「ありがとう」
 と初めて口を開いてくれた。嬉しかった。
 その日がきっかけとなり、女の子は声をかけてくれるようになった。
 私は、二年生の時に、男性との「絆創膏を一枚持ち歩く」という約束に感謝している。一枚の絆創膏で人を助けることができ、仲良くなることもできたからだ。
 中学三年生になった今も、一枚の絆創膏は私のリュックの中に入っている。